琥珀の奇蹟-WOMEN-
柚希③
洗面台に備え付けられている時計を確認すると、まもなく午後11時5分。
まだ、起きてるよね?
せっかく温まったのに、風邪をひいたら大変だと、急いで身体を拭いて、ルームウエアに着替え、ドライヤーで髪を乾かす。
洗面の鏡に映る自分の顔は、すっぴんだけれど、身体が温まったせいか頬がほんのり赤らみ、心なしか口角が上がってる。
隆弘に電話をかけるだけなのに、何だか浮かれているみたいで、恥ずかしい。
『なんて言おう…』
ドライヤーをとめ、鏡の中の自分に問いただす。
とりあえず、先ずは、お疲れ様?かなぁ…で、どうした?って聞かれたら、どうしょう…「ただ声が聴きたくて」…なんて恥ずかしくて言えないし…逆に、「私の声、聞きたかったんじゃないかなぁって思って」…って?それじゃ自意識過剰すぎでしょ!!…それより、そもそもこんな時間にかけて、疲れてるだろうし、やっぱり電話するのやめた方が…
まるで、付き合い始めた頃のように、たかが電話をかけるだけの行為に、いろいろ考えすぎて、妙に緊張が高まる。
ふと、もしかしたら、お風呂に入っているこの間に、隆弘から何か連絡が入っているかもしれないと思い立ち、スマホを取りにリビングへ向かう…と、
”ピンポーン”
ドキッ!!
真後ろにある、玄関のインターフォンがなった。
咄嗟に時間を確認すると、午後11時を20分ほど過ぎている。