琥珀の奇蹟-WOMEN-
こんな時間に、誰?
さっきと全く違う種類の緊張が、一気に身体を硬直させる。
まさかこの時間に、郵便や宅急便も来ないだろう。
かといって、居留守を使うには、こう明かりのついた部屋では、今更難しい。
無視するわけにもいかず、リビングの入口付近にある通話用の受話器を取り、恐る恐る『はい?』と、小さく声を出す。
『俺』
即座に返ってきた返事は、予想外にも、聞きなれた声音。
旧式のインターフォンの為に、モニター画像は映らないが、間違えようがない。
足早に玄関に向かうと、即座にドアを開ける。
そこには、今から1時間半ほど前の自分を彷彿させるほど、ひどい有様の隆弘が立っていた。
『お前、早く開けすぎだろ』
第一声、怒ったように言い放つ。
うちのインターフォンがモニター付じゃないことを知っているから、確かめもしないで開けたことを、無用人だと言いたいのだろう。
『でも隆弘の声だったし…』
『入るぞ』
『あ…うん』
私の言い訳は無視され、少し肩に残っていた雪を払うと、さっさと室内に上がってしまう。