琥珀の奇蹟-WOMEN-
ドアを閉める直前に外を見れば、雪は降り続き、自室のある3階から見る景色は、既に辺り一面真っ白だった。
鍵をかけ、隆弘の濡れた革靴を揃えて端に寄せる。
不思議と、さっきまで会いたいと思っていた隆弘が目の前に現れて、嬉しさよりも、緊張している自分が可笑しかった。
そんな私の心のうちなど知らずに、隆弘はリビングまで入ると、着ていたコートを脱ぎそのままダイニングの椅子に掛けようとするので、慌てて受けとり、ハンガーに掛け、寝室の自分のコートの隣に並べて掛ける。
『急にどうしたの?』
コートは雪で濡れたからか、ずっしりと重く、氷のように冷たかった。
『別に…』
『あ、ご飯は?何もないけど簡単なもので良かったら…』
『いや、食ってきたからいい』
濡れた髪を拭くためのタオルを渡すと、『サンキュ』と短く一言。
隆弘がこの部屋を訪れるのは、もちろん初めてじゃないけれど、平日の、こんな深夜にいることなど、いままで無かった。
しかも、普段見慣れていないスーツ姿が、いつもの隆弘とは別人に思えて、内心ドキドキしてしまう。