琥珀の奇蹟-WOMEN-
とりあえず、温かいものでも入れようと、湯沸かしのケトルに二人分だけの水を入れ、スイッチを入れた。
その間、黙ってダイニングの椅子に座り、何か考え事でもしているような、いつもと様子の違う隆弘。
その沈黙に耐えきれず、静かに話しかけた。
『…雪』
『ん?』
『結構、降ってたでしょう?』
『ああ、そうだな』
『電車はまだ走ってた?』
『いや、止まってた』
隆弘の会社からここまで、かなり距離があるはず。
『じゃ、どうやってここまで来たの?』
『タクシーと歩き』
淡々と答える隆弘。
それにしては、そのずぶ濡れ感が半端ないのは何故だろう。
”トンッ”
すぐ後ろで、ケトルのスイッチが上がった小さな音が響く。
二人分の量だからか、いつもより早く感じた。