琥珀の奇蹟-WOMEN-
『カフェオレで良いよね』
返事はなかったけれど、勝手に了承だと受け取め、棚からスティックタイプのカフェオレを取り出すと、封を切って大きめのマグカップに一つずつ入れる。
その作業中、隆弘に背を向けた形になったのに、何故かジッと見られているような気がして、落ち着かない。
今日の隆弘は、やっぱりおかしい。
こんな日は、いつもだったら、仕事の愚痴を30分以上は聞かされるのに。
まさか…。
良からぬ想像が頭をよぎる。
確かに、最近すれ違ってばかりの私達だけど、別れ話…のはずないよね?
ケトルの湯をカップに注ぐ手が、わずかに震えてしまう。
『…何か、あった?』
ネガティブな想像を振り払うよう、取り立てて何でもない風に話しだす。
『何でそう思う?』
『だって、変じゃない?平日のこんな時間に、突然来るなんて、』
返答はなかったけれど、黙っていると沈黙が続きそうで不安になり、そのまま話を続ける。
『しかもこの天気の中だよ?…用事なら、電話だってメールでだって良かったのに、わざわざここまで会いに来ることなんか、いままでだって無かっ…ヒャッ』
不意に、椅子に座っていたはずの隆弘に、後ろから抱きすくめられる。