琥珀の奇蹟-WOMEN-
『ん…』
触れた唇は、まだやっぱり冷たかったけれど、しばらくして口内に侵入してきたものは、熱くて柔らかく、私の脳を刺激する。
いつもより長く、終わりのないようなキスの波に身を委ねながら、さっき不安になったことが嘘のように消え去っていく。
隆弘に愛されている感覚が、身体中を駆け巡り、何も考えられなくなりそうだった。
やっぱり彼が好きだと自覚せざる得ない。
不意に、わずかなコーヒーの苦みを捉え、唇が離れた瞬間に『…もしかして琥珀堂…行った?』と聞くと『ああ、ちょっとな』と答えてすぐに、またキスを再開しようとする。
その甘く溶けてしまいそうな感覚に、いつしか力さえ入らなくなってくると、私の手首を掴んでいたはずの手が、いつの間にか部屋着の裾から侵入し、ゆっくりと背中を滑らせる。
その冷たい手の感触に、思わず我に返った。
『ちょッ!』
強引に引き離すと、不機嫌そうな顔の隆弘。
『何だよ』
『だって、明日、お互い仕事だよ?』
『そうだな』
『そうだなって…』
目の前では、背広を脱ぎ、首元を緩めネクタイを外す隆弘の姿。