琥珀の奇蹟-WOMEN-
車内は各停ということもあり、人はまばらで混雑していなかったけれど、なんとなく座席には座らず、入り口近くのポールに寄りかかり、窓の外を眺める。

動き出した車窓から見る景色は、駅前のネオンやイルミネーションがキラキラと眩しく、程なくしてちょうど今日、隆弘と行く予定だった、お店の前も通り過ぎた。

ちらりと見た様子では、やはり店内は満席のようで、通り沿いにも行列ができ、突然のキャンセルでも、全く問題はなさそう。

不意に、右腕にしたブレスレット型の腕時計で時間を確認する。

午後8時。
…本当だったら、今頃あのお店のドアをくぐり、席に付いていた時間だ。

そこまで考えて、急に笑いがこみ上げてきて、慌ててストールでもう一度口元を隠す。

我ながら、どうしたんだろう?
いい歳して、こんな聞き分けのない子供のようなことを…。
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