琥珀の奇蹟-WOMEN-
クリスマスは彼氏と過ごすのがステータスな時代なんて、とっくに終わってる。
そもそも、もう私達は自由が効く学生でもなく、クリスマスだからって、仕事は待ってはくれない。
社会に出て5~6年も過ぎた今は、お互いそれなりに重責を担う仕事だって任されるのは、当然のこと。
特に、今年に入って、チームをまとめる主任の職に就いた隆弘が、今実績を積もうと、頑張っているのも、充分理解しているし、そんな隆弘を誇らしくも思う。
でも…。
何だろう?このモヤモヤした気持ちは…。
電車は都会の景色から、街中に移り、しばらくすると、がらりと変わって閑静な住宅街を走る。
小さなトンネルをくぐり、一瞬だけ車窓に自分の姿が映りこんだ。
そこに見えたのは、今年の冬に購入したばかりの真新しいベージュのコートに身を包んだ、大人の女。
職場を出る前に、20分かけて巻いた髪。
普段はしない艶のあるルージュに、石のついたピアスが、耳元で揺れる。
我ながら、完全にクリスマスを意識したテイストに、自分自身が思う以上に今日を楽しみにしていたのだと気づく。