クリスマスの夜にわかったこと

 
「……ごめんなさい」


「なんで謝る?」


「だって……」


「毎年」


「っ」


「毎年、君がこうしてくれるのを心待ちにしていた俺が謝るほうだ。今年も来てくれて、触れてくれるのかといつからか思うようになった頃にはもう引き返せなくなっていて。こんなザマでも嫌いじゃないクリスマスが、ともすれば最高じゃないかとも思えてきて。……けど、君からしたら俺は歳上のおじさんだろうから。……色々思っていたのに、今年は名前呼んでくれるし訳がわからなくなってこんなことを……」


「……ぇっ?」


 寡黙な人が、必死に伝えようとしてくれていた。


 毎年毎年、いったいいつから気付かれていて、いつから心待ちにしてくれていたのか。いったい何故どうしてそんな心境に。何故わたしの手を振り払わなかったのか。何故そんなに眉間が緩むの?
 訊きたいことは山程ある。はっきり聞かせてほしい。けれど、こんな至近距離でバレてしまった気まずさがわたしを動けなくさせ、上手く言葉など出やしない。


「普段もしょっちゅう顔出してくれて、卒業しても毎年この時期手伝いに来てくれるのはなんでなのかと思っている――まあ最終的に採用しているのは俺なんだけど。そのことに関して、馴れ合いで採ったわけでは決してないが、私情を一切挟んでいないかといえば、自信はない」


「わたしも仕事に手を抜いては絶対にないですっ。わたし、ケーキ、ここの、ほんとに好きで……」


「ありがとう。そうか……ケーキが好きなのか……」


 それは本当だけれど。好きだけど。


 好きだけど……


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