過保護な御曹司とスイートライフ
頭のなかをフル回転させていると、成宮さんは足の痛みに耐えながら言う。
苦笑いを浮かべているみたいだった。
「そりゃ、いい判断だな。昨日の夜、あんな危なっかしいことしてたヤツと同一人物とは思えない」
「……どうしてここが?」
まさか、つけられた?と疑いながら聞く私に、成宮さんは「なんでって……」と、わずかに不思議そうな声で言ってから「会社で調べれば、そんなもんすぐわかるだろ」と答える。
「会社……」
呟いてから、ハッとした。
そんな一般市民の個人情報が調べてすぐにわかるのなんて、警察くらいだ。
〝会社〟なんて言い方してるけど、つまり〝署〟ってこと――。
「鈴村。とりあえず、部屋入れてくれると助かるんだけど。おまえが嫌がるようなことはしないから。あと、足。いい加減、解放してくれ」
お願いされて、慌ててドアを引く手を離した。
公務執行妨害なんて言われて、捕まえられちゃったら……と不安になったから。
警察は、自分の職業を言いふらしちゃいけないって聞いたことがある。
だから、〝会社〟って言い方をしたんだろう。
それに、あんな慣れた感じでドアの隙間に足だって挟んできたし……たぶん、そうだ。
ドアを開けると、私がまだ抵抗を試みると思っているのか、成宮さんはドアを片手で押さえたまま、私を見下ろす。
私よりも、二十センチ近く高い身長。ガッシリとした体格。
たしかに警官とかやってそうな体格だな……と思いながら「散らかってますが、どうぞ」と言うと、成宮さんが「おう。悪いな」と笑うように言った。