過保護な御曹司とスイートライフ
「いや、別に。ただ、平気で嘘ついて裏で笑える女なんだと思っただけだ。怒るほどの興味もない」
成宮さんの言葉に、女性は少し呆然としたあと、笑顔を取り繕う。
「そんなに怒らないで。ね?」となんとか自分のペースに引き込もうとしているみたいだったけれど、成宮さんはそれに乗る気はないようだった。
揺るがない、純粋な瞳が女性に向けられる。
「男は単純だから、アンタみたいな女に誘われたら乗るヤツも多いだろ。ただ、みんながみんないいヤツじゃないから気をつけろ。女なんだし、何かあったら大変だろ」
その言葉に、女性は言葉を詰まらせ、バツが悪そうに視線を落とした。
うろたえて見える横顔に、恥ずかしさのような感情が見える。
きっと自分がひどいことをした自覚はあったんだろう。なのに、成宮さんに優しい言葉をかけられてバツの悪さを感じたのかなと思った。
成宮さんは心が広いから、女性にバカにされているのを聞いてしまってもなんとも思わなかったのかもしれない。
なんでもないことみたいに、流せるのかもしれない。
でも……少しも傷つかなかったなんてことはないと思う。
それなのに、自分の事をあんな風に笑っていた女性相手でもきちんと対応する姿に、とても優しい人だなぁと再確認する。
とても真面目で純粋で……そして、どこまでも優しい人だ。
様子をじっと眺めていると、俯いていた女性がバッと顔を上げる。
そして「あの、もし私が本気で好きになったって言ったら……」と言いかけたところで、成宮さんが不意にこちらに視線を向けた。
思わずビクッと肩を揺らすと、成宮さんは笑顔を浮かべ「おー。お疲れ。荷物持つ」とこちらに近づいてくる。