過保護な御曹司とスイートライフ
「成宮さんのせいじゃありません」
声を震わせながら言うと、成宮さんは「……ん」と曖昧な返事をし、そのまま黙った。
静かな部屋。
ただ、立ったままでいる私を、成宮さんがゆっくりと見上げ……寂しそうに微笑んだ。
「勝手に出て行こうとするなよ。びっくりするだろ」
悲しさを浮かべる瞳に見つめられ、我慢していた涙が一筋頬を伝う。
「だって……迷惑が……」
「うん。おまえはどうせそう考えたんだろうなっていうのも、すぐわかった。俺が追いかけたら、あとでおまえとあいつの間がおかしくなるんじゃないかってことも……でも、止まらなかった」
前髪にくしゃっと手を差し込んだあと、成宮さんが立ちあがる。
そして、私に近づきながら「ごめんな」と謝るから、その瞳をじっと見つめ返しながら口を開く。
「なんで、そんなに一生懸命になってくれるんですか……」
ポロポロ落ちる涙のせいで、目元が熱い。
「私は、成宮さんにそんなによくしてもらうような女じゃ……」
「誰を大事にするかは、俺が決める」
目の前で立ち止まった成宮さんが、指先で私の涙を拭う。
優しい指先に、またひとつ涙がこぼれた。
「おまえは、気が強いと思ったら臆病なとこもあったりして、一緒にいて飽きない。素直だから嘘もつかないし、優しくていいヤツだろ。
料理だってうまいし、家族と関係ないところでなら自分の意見だってちゃんと言えるし、しっかりもしてる」
柔らかく細められた瞳が、甘やかすみたいに私を見るから、胸がトクトクとうるさいくらいだった。
じっと見つめる先で、成宮さんはわずかに苦しそうな笑みを浮かべ……。
「なのに、どこか危なっかしいから……放っておけない」
そう言い、私を抱き締めた。