過保護な御曹司とスイートライフ
溢れる涙がスーツに吸い込まれていく。それを注意しなくちゃいけないのに、できなかった。
抱き締められることをずっと望んでいたみたいに満たされた胸から嬉しさが溢れだし、収拾がつかなくなってしまう。
「最初は、そこまで深く考えての行動じゃなかった。ただ、あのまま放っておいたらおまえが他の男を誘うのかって考えたら、危ないとか、ちょっと気に入らねーなって思ったくらいで。
でも、翌日起きておまえがいないことに気付いたとき、放っておく気にならなかった。もっと一緒にいたかったし、もっと知りたいと思った」
「……だから、追いかけてきてくれたんですか」
小さな声で呟くと、「ああ」という返事が直接胸から響いた。
大きな身体に抱き締められ、騒がしかった気持ちが不思議と落ち着いていく。
ドキドキするけれど、とても心地いい。
当たり前だ。この二十日間、ずっとこうして眠ってきたんだから。
「ただ、変な始まり方したから気になるのかとも思ったけど、おまえと話してると楽しいし、しっくりきたから、もっと一緒にいたくて一緒に住むことを提案した。
一緒に暮らしてみて、それは間違いじゃなかったって確信した」
一拍置いてから「おまえが好きだ」と再度告白した成宮さんに、震える唇を開く。
「もう、聞きました……」
「何度言ったっていいだろ」
即答され、涙を流しながらその背中に手を回した。
私がそうしたことに気付いたからか、成宮さんの腕に力がこもる。
耳を当てた胸からはトクトクとわずかに速い音が聞こえてきて、緊張していたのかな、とおかしくなってしまった。
全然そんな風には見えなかったのに。