過保護な御曹司とスイートライフ
「別に、理由はいい。話したくないって言うんなら、無理やり聞き出すつもりもない。けど……初めてなら、そう言えよ。そしたらもっと――」
「〝もっと〟……なんですか? 優しくしたのに、とかそういうことが言いたいなら、私にも言いたいことがあります」
逸らしていた視線を合わせる。
形のいい瞳をじっと見つめながら口を開く。
「ひどくしてって、最初に言ったじゃないですか」
その言葉に、成宮さんはハッとしたような表情になる。
それからわずかに眉を寄せ、私の視線から逃げるように瞳を横にずらしたのは、心当たりがあるからだろう。
ひどくしなかった心当たりが。
だって、昨日成宮さんは終始優しかった。
身体中にキスするように触れた唇も、壊れ物でも扱うみたいに撫でる指先も、私の頬を包み込む大きな手も。
全部が優しさで溢れていて……。
『……っ、ツラくないか?』
自分こそツラそうな顔をしながらも私を気遣う掠れた声が脳裏に思い出され、頬が熱を持つのを感じた。
脳内で再生される昨日の成宮さんの表情や息遣いひとつひとつが色っぽくて、恥ずかしくていたたまれなくなる。
「だいたい、なんで抱いたんですか」
熱でどうにかなりそうな頭を仕切り直したくて口を開くと、成宮さんはわけがわからなそうに答える。