過保護な御曹司とスイートライフ


「最初はよくわからなかった。檻みたいな部屋に閉じ込めてる婚約者相手に、なにそんな気遣ってんだって。……でも、今の話聞いててようやくわかった。理由のわからない執着を鈴村は怖がってもいたけど、その裏でちゃんとアンタの優しさを感じてたってことだろ。
じゃなきゃ、裏切ることに罪悪感なんか感じない」

堂々と言う成宮さんに、辰巳さんは驚きから目を見開く。

本当に、成宮さんの言葉にはいつだって嘘がなくて……すんなりと心のなかに落ちるからすごい。

本人からすれば単純に思ったことを言っているだけなんだろうけれど、その純粋な言葉は力を持っている。
もう止めることは諦めて呆れ笑いを浮かべていると、成宮さんが続ける。

「俺もこいつが大事だから。今まで、自分を省みずにこいつを守ってきてくれたことに礼を言う」

突然の言葉にハッとして見上げてから……慌ててうつむく。
真剣な眼差しを見てしまったせいで、頬が熱を持つから、それを手で隠した。

こんなことまで言わなくていいのに……と思い、チラッと視線を移すと、辰巳さんは目をパチパチとしばたたかせてから、ふっと表情を緩めた。

「おまえに言われることでもない。俺が勝手にやってきたことだ」

そう言った辰巳さんが「それに」と続ける。

「もう彩月を自分のものだと思い込んでいるようだが。俺の思いを知った優しい彩月が、もしかしたら俺のもとに戻ってくると言いだす可能性もなくはない」

口の端を上げた辰巳さんの挑発に、成宮さんは「は……?」と小さくもらしたあと、顔を歪める。

そんな成宮さんを見た辰巳さんは「冗談だ」と満足そうに笑った。そして、それから私を見る。
優しい眼差しを受け、黙って視線を返していると、辰巳さんが告げる。


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