過保護な御曹司とスイートライフ




辰巳さんと和解してからというもの。

それまでよりも距離感はだいぶ近くなった気がする。もちろん、会う頻度だとかは前よりも減ったし、定期的でもなくなったのだけど。

私に対する立ち位置を、婚約者から兄のような存在に変えた辰巳さんは、成宮さんの部屋を思い出したように訪ねてくるようになった。

「彩月を幸せにしてくれる男なら、もちろん文句を言うつもりはない」
「とか言いながら、しょっちゅう邪魔しに来るのやめろよ。大体、アンタ、こいつのこと好きだったんじゃねーの? 俺は正直、まだ諦めたのか疑問なんだけど」

和解してから一ヵ月が経った、土曜日の午後。
ケーキを持ってきてくれた辰巳さんに成宮さんが咬みつく。

辰巳さんは、爽やかな笑顔を浮かべて答える。あの一件があって以来、なにか吹っ切れたようで辰巳さんは表情が明るくなったし、性格も若干、変わった気がする。

こう……少しふざけた、というか、くだけたというかそんな感じだ。
本来の辰巳さんはこうなのかもしれないと思うと、なんだかホッとする。

成宮さん相手だと地が出せるのかなって。

「俺は彩月さえ笑って過ごせるならそれでいい。もちろん、俺も彩月が望むのなら恋愛対象としても充分見られるけどね。……でも、こんな年上じゃ彩月が嫌かな」

傷ついたような微笑みに「そんなこと……」と言いかけてから、成宮さんにチラッと視線を移し、続ける。

「そんなことはありません。辰巳さんは紳士的ですしとても素敵です。……ただ私はこの人がいいってだけで」

辰巳さん相手にこういう話をするのは、身内相手に恋愛話しているようで恥ずかしい。
だから目を泳がせながら話すと、辰巳さんは困り顔で笑った。

「そこまでハッキリ言われちゃうとね。心配しなくても、彼から彩月を奪おうなんて考えていないから安心してくれていい。
ただ、俺はやっぱり彩月が大事だから……そうだな、兄のような存在として心配させてくれると嬉しい」

「それは、もちろん……ありがとうございます」


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