過保護な御曹司とスイートライフ
あの話し合いがあってから、辰巳さんはすぐに婚約の解消をしてくれた。
辰巳さんのご両親は、辰巳さんの言っていた通り〝気が変わってお互いが納得した上なら仕方ない〟という反応だったけれど、私の両親はやっぱり〝どうにかこのまま結婚できないか〟と粘ったらしい。
私が辰巳さんと結婚すれば、辰巳さんの会社は無条件にうちの会社を支えると考えているんだろう。
そこを辰巳さんが、そんなことしなくてもこれからも支えていく所存だ、と伝えなんとか納得させたという話だった。
お母さんからは〝だから、機嫌を損ねないようにって言ったじゃない!〟と怒りの留守電が入っていたけれど、その電話を折り返してはいない。
そのことを話したら、辰巳さんはそれでいいと笑っていた。
『もしかしたら、ご両親は困ったときに彩月を頼ってくるかもしれないけど、俺は正直、応える必要はないと思っている。
まぁ、彩月の判断に任せるけど……決してひとりでは決めないように。俺か……最悪、そこの彼に相談することを約束して欲しい』
〝そこの彼〟なんて、わざと呼んだ辰巳さんに成宮さんは笑顔を引きつらせていたけれど、意見だけで言えば辰巳さんに賛成だということだった。
傍から見れば、私の両親は結構ひどく映るのかもしれないし、私は同情されてしまうのかもしれない。
でも、こんな風に、成宮さんと辰巳さん、ふたりに過保護にされてる自分を、不幸だとは思わなかった。