過保護な御曹司とスイートライフ
「家族ではないです。……知り合い、になるんでしょうか」
「ふーん。歳は?」
「三十二歳です。私より、十歳年上なので」
たしか、そうだったハズだ、と考えていると、成宮さんは「俺よりふたつ上か」と呟くようなトーンでこぼす。
ってことは、成宮さんは三十歳なのか……。その割に若く見える。童顔ってわけではないけれど、二十七、八くらいだと思っていた。
でも、本当にどこかで見た気がするなぁ……。なんだろう、この既視感は……と横顔を眺めていると、不意に成宮さんがこっちを振り向く。
「で。あいつが〝許されない〟って言ってた相手か?」
窓の外を見ていた瞳が私を映す。
『昨日のことは本当にすみませんでした。もちろん、責任とれなんて言いませんし、今後も会いたいなんて言わないので。そんなこと、許されませんし』
土曜日の朝、私がうっかりそんなことを言ってしまったから気にしていたのかもしれない。
真っ直ぐに見つめてくる瞳を前に嘘をつくことは、それこそ許されない気がして、迷ったあとうなづいた。
「土曜日の朝と、水曜日の夜。決まった時間にあの人が……辰巳さんが部屋にくるんです」
「ただ遊びに……ってわけではなさそうだよな?」
私はどこか辰巳さんに怯えてしまっているから、そういう雰囲気や、歳の差からそう感じたのかもしれない。
「そうですね。どちらかというと……見張りに近い気がします」
「見張り?」
「私がきちんとあの部屋に戻っているか、誰も部屋に入れていないか……そういうことを確認しに来てるのかと」
辰巳さん本人に聞いたことはない。でも……たぶん、そうなんだと思う。
あの、恐ろしく洞察力のいい瞳はいつでも私の部屋に残る違和感を探しているように思えるから。
膝の上で両手をいじっていると、成宮さんが「もしかして、どこかのお嬢様とかそういう感じか?」と聞いてくるから、「まさか」と笑い首を振る。