過保護な御曹司とスイートライフ
「漫画とか読むんですね」
成宮さんは食器類を包んでいた新聞紙をとりながら答える。
「半分は俺のじゃないけどな。同い年の幼なじみがいるんだけど、そいつが持ってきてそのまま置いてったりするから、捨てるわけにもいかねーし」
「へぇ……いいですね。幼なじみ。私、兄妹もいないので、小さい頃から一緒にいるような距離感って少し憧れます。……あの、漫画って全巻そろってますか?」
並べていた漫画は十二巻が抜けているから、段ボールの中から探す。
「あー、ないのもある。一、二冊抜けてんのもあるから」
やっぱりか、と十二巻は諦め、次のシリーズを並べにかかる。
よく一冊だけ抜けていてムズムズしないなぁ……と思っていると、成宮さんはガサガサと溜まった新聞紙をゴミ袋に突っ込む。
「俺も兄妹はいないから、家族同然みたいなのはそいつだけだな。家族……まぁ、下手したら家族より近い場所にいるかもしれないけど」
ははっと笑った成宮さんが、次の段ボールをベリベリと開ける。
「俺の両親、離婚してるんだよ。六年だか七年前くらいに別れたんだけど、それまでも結構ドロドロしててさ。見てるのすげー嫌だったから、離婚するって聞いたときはやっとかと思った」
矢田さんの話を思い出しながら「そうなんですか……」と返す。
どんな顔をして話しているんだろうって思ってチラッと振り返ってみたけれど、成宮さんはなんてことないみたいな、明るい表情で話していた。
「親の嫌な部分見たからか、それからはあんまり家族って感じでもないっていうか……親愛みたいなの? それが薄れた感じ。だから、両親よりは幼なじみのヤツの方がまだ気軽に接せられるし気も許せる」
「……強いんですね」
そう声をかけると、少ししてから「なにが?」とキョトンとした顔で見られるから「だって」と続ける。