過保護な御曹司とスイートライフ
「そんな話を、明るい顔して話すから……もう割り切れてるのかなって思って。だとしたら強いなって……偉いと思ったんですけど……すみません。無神経な言葉でしたか?」
普通に抱いた感想を言っただけだったけれど、成宮さんが、弾かれたみたいな顔をするから謝る。
なにか気に障るような発言をしてしまっただろうか……と考えていると、成宮さんは「いや」とゆるく首を振り、困ったように笑った。
「立場もあるんだろうけどさ。俺の周りではそんなの当たり前で、親の不仲とか〝そんなこと〟って済ませる感じだったから。
今は俺もそう思うようになったけど、ガキの頃なんかはなかなかそういう考え方に慣れなくて、感情的になるたびに叱られたりもした」
成宮さんが言ったように、立場って言葉に尽きるんだろう。
普通の家庭なら両親の不仲なんて大問題だし、当然、そんな親を見たらこどもはツラいし苦しい。でも成宮さんは、それを悲しんだりすることも止められていたのか……と考え胸が痛む。
それを当たり前とする世界で生きてきたのか。
「まぁ、そんな感じだったから、今、鈴村に強いとか偉いって褒められて、なんか……こう、ガキの頃消化不良になってそのままだったモンが少し解けた気がした」
最後に「ありがとな」と笑顔で言われ、「……あ、いえ」と返すのが遅れてしまった。
こどもの頃、押し殺した感情がまだ心の奥に残っているってことは、結構なことのハズなのに、あまりに屈託ない笑顔を浮かべるものだから、面食らってしまう。
話している内容と、声や表情の明るさが合っていないというのが正しい表現かもしれない。
さっき成宮さんは感情的になると怒られたって言っていたし、そういうことなのかなと思う。
出逢ってからまだ間もないけれど、この人の沈んだ表情や怒った声を聞いていない。