過保護な御曹司とスイートライフ
そんな私を両親たち大人はニコニコと笑顔で見つめ……そして、辰巳さんは〝可哀想に〟とでも聞こえてきそうな微笑みを浮かべて私を見ていた。
その眼差しの意味はわからなかったけれど、辰巳さんだって勝手に婚約者を決められたわけだし、同じ立場の私に同情してくれたのかなと思った。
「私が泣いたり嫌がったりすると、両親は昔からすごく面倒くさそうな顔をしました。両親に嫌な顔されたくなくて〝泣いちゃダメなんだ〟〝聞き分けよくしなきゃダメなんだ〟って小さい頃からそればかり思ってきて……だから、表情が乏しいのかもしれません」
話が暗い方向にいってしまっている気がして、最後はわざと明るく笑い、そのまま続ける。
「それだけ話すと、両親のせいみたいになっちゃいますけど、私自身もその方がよかったんです。家庭内に波風は立てたくないから。
それに私、恥ずかしいですけど初恋もまだなんです。たぶん、恋愛苦手なのでちょうどいいんです」
雰囲気を重たくしてしまった気がして、わざと明るく言い切ると、成宮さんはそんな私をじっと見つめた。
澄んで見えるその瞳に、なんとなくだけど取り繕った自分が馬鹿みたいに思えてしまい……そっと目を伏せた。
決して責められているわけでもないのに、なんでこんなに後ろめたい気がしてしまうんだろう、と考えていると成宮さんが言う。
「そうやって、全部を他人のせいにしないのは、きっとおまえが優しいからなんだろうけど。全部を自分のせいだからって諦める必要はないんじゃねーの?」
ゆっくりと視線を合わせると、待っていたように口の端をニッとあげられる。
「全部自分のせいなら、責任とれる範囲内でなにやってもいいってことだろ。もう、なにもできなかった中学生の頃とは違うし、ちょっとくらい勝手やっても許される。
鈴村はずっと自分の気持ちを溜め込んでたんだし、たった一ヵ月無茶したところで誰も文句言わねーよ。言われたところで知ったことじゃねーし」