過保護な御曹司とスイートライフ
「いや、料理とか作ったことねーな。……今考えると、なんで食器が必要だと思ったんだかわからないし、いらなかった気もする」
「……結構、後先考えない感じなんですね」
……まぁ、なんとなくそんな感じはしてましたけど。とは言わずに食器を手渡す。
成宮さんはそれを受け取り、吊り戸に入れながら「そうかもなー」と答えた。
「仕事に関係ないことは、基本その時の気分でいいかなとも思うし、細かいことは気にしてねーな。それに俺、結構そういう勘みたいなの鋭いし。本能みたいなのにしたがって、それが間違った選択だったってことって過去にもあんまりないし」
自慢みたいに言う横顔を見て「そうなんですか」と返したあと、吊り戸に視線を移す。
「……〝間違った選択〟で吊り戸いっぱいになりそうですが」
「まぁ……そんなときもあるよな」
ひとつめの吊り戸のなかは、もう次のお皿が置けないほどにぎゅうぎゅうだ。
……というのも。
「それ、種類ごとにわけるからですよ。重ねられるものを上に重ねちゃえば余裕でしょ」
数枚ごとに置く場所を横に移していたら、早くにぎゅうぎゅうにもなる。
そのくせ、重なっている枚数は少ないから上の方はガランとしていた。
「でも、店に置いてあるのは種類ごとでわけてあるだろ」
「お店ですからね。どうしても違う種類を積み上げるのが嫌なら、吊り戸にもうひとつ棚を作るような便利なものが売ってますから、それ買うかですね。……あとは、この茶碗蒸し用の茶碗とか、明らかに使用頻度の低いものはそっちの遠い方の吊り戸にわけるとか」
ひとり暮らしで茶碗蒸し用の茶碗なんて、絶対に必要だとは思えない。
本当にテンションで片っ端から買ったんだな……と半分呆れながら、残りの食器を隣の吊り戸に入れていっていると成宮さんが「そういえば」と話しかける。