過保護な御曹司とスイートライフ


『まぁ、そうかもね。それが普通なんだろうけど、彩月がそんな対応をされてるんだと思うと口を出したくなってね』

ふっと笑みをこぼしているんだろうなっていうのが、電話越しでもわかった。

辰巳さんは私を社会人として、ひとりの女性として接してくれているんだろうけれど、たまにこんな風に、過保護な発言をする。

まるで、自分のこどもだとか妹にでもするような心配を。

『少し出過ぎた真似だったかな。ごめん』

「あ、いえ……」
『メールの件は、とりあえずはわかったよ。一ヵ月間研修施設に泊まり込む……ってことでいいんだよね?』

確認するような、少し低い声に問われる。
まだ勘ぐっているような口調に、一瞬息を詰まらせながらもうなづいた。

「……はい。戻る頃、また連絡入れます」

数秒間、沈黙が流れ心臓がドクドクと嫌な収縮を繰り返し始めたとき。

『わかったよ。もしも、ご両親がなにか言ってきたら俺から説明しておくよ。じゃあ、研修頑張って』

そう告げられ、電話が切れる。

耳から携帯をおろし……暗くなった液晶画面を見つめ、大きく息を吐きだした。
電話しただけなのに、まるで大仕事でも終えたあとのようにドット疲れが襲っていた。

「婚約者、素直に納得したみたいだな」

声をかけられ顔を上げると、腕まくりをした成宮さんが洗面所の方から歩いてくるところだった。

その腕のところどころには、白い泡がついている。……泡?


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