過保護な御曹司とスイートライフ
クローゼットを整理していたときに見たら、やたらと大きかったしふたりで寝ても問題はなさそうだけど……ためらう気持ちがないわけではない。
でも、それもおかしな話だ。
金曜日の夜は私から誘ったし、実際そういうことだってしたのに、今はなんとなく構えてしまうなのはなんでだろう、と考えて苦笑いがもれた。
金曜日の夜は、相当捨て身だったんだなぁと気付いて。
ずっと決めていた金曜日に行動に移さなければ、この先絶対に後悔すると思ったから、本当に必死だった。
でも、そんな自分自身にかけた魔法の効果もあの日だけだ。
もうとっくに解けてしまっているし、本来の私はそう簡単に身体を開けるタイプじゃない。
だから……こんな風に、戸惑ってしまうのが普通だ。
白いTシャツに黒に青いラインが入ったジャージ姿の成宮さんが、リビングの電気をリモコンで消してから寝室に入る。
一気に暗くなった室内に、ドキリと胸を跳ねさせていると、ベッドの奥に横になった成宮さんが呆れたみたいに笑った。
「そんな緊張しなくても、なにもしねーよ」
暗闇のなか、どうにか表情は読み取ることができた。
くっくと喉の奥で笑っている様子に、ムッとしながらベッドに入る。
「別に緊張なんてしてません」
「表情ガッチガチでよくそんな嘘つくな」
「ガチガチなのは元からです。……それより成宮さん。今気付いたんですけど、これだと北枕ですよ」
足を布団に入れ、横になろうとしたところでふと気づき言うと、成宮さんは面倒くさそうな声で答える。
大きな欠伸をしているのが暗闇でもわかった。