過保護な御曹司とスイートライフ
マンションは会社から徒歩十分ほどだから、通勤にも便利だし、スーパーも駅もほど近い。
立地条件だけでもかなり値が張りそうなのに、そのうえ、この広さや高級感だ。家賃は相当高いんだろうなと思う。
初日に一緒に寝てからは、もう当たり前のように隣で眠っていて、成宮さんが私を抱き枕のように扱うことにもすっかり慣れてしまっていた。
別に何をしてくるわけでもないし、私自身、成宮さんの腕の重たさや体温があるとなんだか落ち着くから、とくに注意もしていない。
成宮さんの接しやすさといったら、すでに両親以上なんだからすごい才能だなと感心してしまう。
「えっと……あと、にんじんか」
ピカピカのシステムキッチンの前に立ち、にんじんに包丁を入れる。タンタン、と適当な厚みに切ったあとひと口サイズにする。
それから、お鍋のなかを覗き、牛肉の表面の色が変わっていることと、千切りにした玉ねぎがきつね色になっていることを確認してから、にんじんを入れ炒める。
少しそうしたあと、水を入れ、お鍋にフタをする。そして、じゃがいもを別茹でするようにと、小鍋に水を注いでいたとき、ガチャリと鍵が開いた音がした。
時計を見ると、十九時。この二日間、成宮さんの帰りは二十時を過ぎていたし、だいたいいつもそれくらいだって話だったのに……珍しい。
玄関まで出向くことはせず、キッチンに立ったまま作業を続けていると、バタバタと足音が近づいてくる。
成宮さんは踵から床につくからか、足音は大きい。でも、こんな風に騒がしいのは珍しいな、と思い玄関から繋がっているドアを見ていると、バターンとこちらも勢いよく開けられた。