過保護な御曹司とスイートライフ
「アッキー、これうちの母さんからおすそ分けだってー。キウイ。もう熟してるから遅くても十日くらいで食べきれって。あと、関係ないけどなぜかアーモンドチョコが大量にあって……あれ?」
茶色い髪色をした男の人が明るい声で言いながら入ってきて驚く。
成宮さんと同じくらいの歳に見える。当たり前のように入ってきた男の人は、私を見るとキョトンとした顔をして首を傾げる。
それから「あ!」と声をもらし、ぱぁっとした笑顔を浮かべた。
「もしかして、鈴村さん? アッキーから聞いてる。家出してきたんでしょ?」
〝家出〟とは少し違う気もしたけれど、まぁ似たようなものかと片付け否定はしないでおく。
それよりも、突然入ってきたこの人は安全なんだろうか……と疑りの目で見ていると、男の人がつかつかと近づいてきて手を差し出す。
握手のつもりのようだった。
「俺は、アッキーの幼なじみの竹下慶介。よろしくねー」
とりあえず「鈴村です」と握手を交わす。
ふわっと香る柑橘系の匂いは香水だろうか。
幼なじみ、という単語に、そういえば成宮さんからそんなワードを聞いたっけと思い出す。
『半分は俺のじゃないけどな。同い年の幼なじみがいるんだけど、そいつが持ってきてそのまま置いてったりするから、捨てるわけにもいかねーし』
『俺も兄妹はいないから、家族同然みたいなのはそいつだけだな。家族……まぁ、下手したら家族より近い場所にいるかもしれないけど』
ハッとして「あ、幼なじみって漫画を置いてくっていう……?」と漏らすと、竹下さんはパチパチとまばたきを繰り返してから苦笑いをこぼした。
「なにその覚え方。まぁ、そうだけど。アッキーんとこに置いてる漫画の半分は俺のだし」
「あの、〝アッキー〟って……?」
さっきから気になっていた呼び名を聞いてみると、竹下さんは「もちろん、彰人のことだけど」と明るい笑顔で答える。
あっけらかんとした軽い明るさは、成宮さんのものとはまた違うけれど、話しやすさを感じて、類は友を呼ぶ、ということわざが頭に浮かぶ。