過保護な御曹司とスイートライフ
「ここの住人の成宮彰人。略してアッキー」
ニカッと歯を見せ自慢そうに言う竹下さんに、「……そうなんですか」とだけ返す。
「さすがに三十になって〝アッキー〟ってどうだろうなーって俺なりに思ったから、本人にも聞いたんだけどさ、呼び名なんかなんでもいいだろって言われて。
まぁ、そっかって。ほら、アッキーって細かいところ気にしないから」
笑顔で言われ、その通りだなと思う。
ずっと感じていたことだけど、成宮さんは器が大きい。小さなことを気にしない姿勢は、ときたま呆れて笑ってしまうけれど、好ましい。
「ところで、これ、なに作ってんの? 俺も手伝ったら夕食一緒に食べて行ってもいい感じ?」
キッチンに入ってきた竹下さんに手元を覗きこまれる。
沸騰してきたお鍋に気付いて、弱火にしてから、じゃがいもを茹でるようの小鍋をコンロに置いた。
「手伝ってもらわなくても、ひとり分増えるくらいなら間に合うから大丈夫ですよ。成宮さんが結構たくさん食べるってわかってから、多めに作ってるので」
ハンバーグを作った日に、ご飯の二度目のおかわりをされてもうないことを告げたら、残念そうな顔をされた。
それから、一応、成宮さんが三回おかわりしてもいい量を作るようにしている。
それでも完食してくれるから、作り手としては気持ちいいけれど、食べすぎじゃないかなと少し心配になるほどだ。
「ああ、アッキーは昔からよく食べるからなー。って、言っても、日常的に運動してた学生時代とは違うんだから気を付けないとすぐ腹とか出そう」
ははっと笑った竹下さんが「これ、洗って皮向けばいい?」とじゃがいも片手に言うからお願いすることにする。