過保護な御曹司とスイートライフ
「同棲じゃありません。私がただお世話になってるだけで……」
「でも、ヤルことヤッてるんでしょ?」
首を傾げながら聞かれた言葉に、時間が止まった気がした。
ルーを切っていた手もピタリと停止し……今、なにを言われたんだろうという疑問が頭のなかを行ったりきたり。
完全に停止してしまった私を、慶介さんは不思議そうに見たあと、「あっ」となにかに気付いたみたいに声をもらした。
「ごめん。もしかして怖がらせちゃった? 今の発言ってアウト?」
慌てた様子で謝られ、パチパチと瞬きを数回繰り返したところで、ようやく時間が動き出す。
「いえ……。すみません。あまりに下品な発言だったので、ちょっとびっくりして……」
「あー、やっぱりか! ごめんごめん! なんか男同士っていつもこういう感じだし、俺の周りにいる女の子も下ネタとか全然平気な子ばっかだからつい……」
申し訳なさそうに顔を崩したところを見ると悪気はなかったんだろう。
慶介さんの言うように、本当になんでもない感じで出ただけで。
成宮さんも辰巳さんもそういう感じじゃないから、慶介さんにいきなり言われて驚いたけれど……。
私が世間知らずなだけで、これくらい普通なのかもしれないと思い直す。
「いえ。たぶん、私がそういう話に免疫がないだけですから気にしないでください」
意識して笑顔を作ってから、ルーを全部切り、それをお鍋に投入する。
かきまぜ、そこに少量の牛乳を入れたところでお鍋の方の火は止める。
それからじゃがいもを確認すると丁度良く火が通っていたから、湯切りをしてお鍋の方に移し……ビーフシチューが無事完成した。
あとは、買ってきたカットサラダを適当にアレンジして、パンを出せばいいだけだ。
ふぅ、とひとつ息をつき……それから隣に立つ慶介さんをチラッと見上げた。