過保護な御曹司とスイートライフ
成宮さんが私の部屋を訪ねてきた朝がいい例だ。
辰巳さんは私の言動よりも、洗ったばかりのカップという物証を優先させていた。
それは嘘がバレていないかと私が辰巳さんの表情を窺っていたから気付いたけれど……たぶん、私が気付いていないだけでいつもそうなんだろう。
私が本当のことを言っていようがどうだろうが、その裏をいつでもとられている気がする。
それは、単純に性格のせいなのかもしれないけれど……いくら嘘をつかれるのが嫌いだと言っても、度を超えているようにも思う。
あれじゃあ、辰巳さん本人だって息苦しそうだ。
「でも、おまえのことはすげー大事にしてるんだろ?」
「……はい。本当に、なんで辰巳さんみたいな人が私なんかを構ってくれるのかわからないんですけど。婚約者って紹介された時からずっと、特別に扱ってくれてます。
でも……辰巳さんが私に向けてくれている愛情って、婚約者に対するものっていうよりは慈悲とか、保護欲とか、そういうもののような気がします」
オムライスにスプーンを入れると、半熟にした卵がとろりと流れ落ちる。
卵の中にチーズを入れてみたけれど、ちょうどよく溶けていて嬉しくなる。
「保護欲かー。まぁ、言ってる意味はわかるよな。歳も離れてるし妹みたいに思ってても不思議じゃない」
妹……確かにそうなのかもなぁと、思う。
今まで、週に二回、必ず辰巳さんと顔を合わせていたからあまり深く考える時間もなかったけれど、今回は会わなくなって一週間以上が経つ。
その間にも辰巳さんのことを自然と考えてしまうことは結構あったし、考えれば考えるほど疑問符が浮かぶばかりだった。