過保護な御曹司とスイートライフ
コンタクトをしていない目をこらして置時計を確認すると、六時四十分。
土曜の朝なのにこんなに早起きしているのが不思議で、昨夜から今までのことが、どれだけ非日常だったかを実感する。
あんな冒険は、きっとあれ一度っきりだ。
もう許されないし……そもそも、勝手なことをした私を、あの人はどう思うだろう。
後悔はしていない。
それでも、自分がしでかした事の大きさをじわじわと思い知り、ぎりっと奥歯を噛みしめる。
ふーっと長い息をつき、持っていたバッグをベッドに放り投げ、そのまま私もそこにダイブする。
そういえば、あのホテルのベッドのサイズはなんだったんだろう。
ずいぶん大きかったけど、あれが噂にきくクイーンとかキングとかいうものだろうか。
ポフンと沈んだベッドにうつ伏せになったまま、ただぼんやりとしていたとき、インターホンが鳴った。
ピンポーン……という音に耳を疑ってから、もう一度睨むようにして時計を確認するけど、時間は六時四十三分。
人の家を訪ねていい時間じゃない。
「部屋を間違えてる……とか?」
でも、私の部屋は一番奥だ。
間違えるだろうか。それとも……。
首を傾げているうちに、もう一度ピンポーンと鳴るから、慌てて玄関に走り寄る。
そして、サムターンを回してドアを開けて……言葉を失った。
目を丸くしたまま停止した私に気付いたその人が「あ」と言葉をもらしてから、ため息を落とす。
「おまえ、急にいなくなるなよ。心配するだろ」
やれやれって感じのトーンで言われても、すぐに返事がでてこなかった。
だって……なんでここがわかったの?
昨日、成宮さんは勝手に『成宮だ』って自己紹介していたけれど、私は名前も住所も言っていない。
『匿名希望です』を通した。
成宮さんにはなんの迷惑もかけたくなかったから。
なのにどうして。
そんな疑問を頭のなかでグルグルさせていると、成宮さんは玄関ドアの横にある表札を見て「おまえ〝鈴村〟っていうんだな。下の名前は?」と聞く。