過保護な御曹司とスイートライフ
「成宮さん、知れば知るほど家事できないですけど、よくひとり暮らししようなんて思いましたね」
掃除洗濯炊事、成宮さんは基本的になにもできない。
やる気がないわけではないけれど、お風呂掃除をすれば盛大に泡まみれになってそのままリビングに戻ってくるし、食器洗いも同様。
数日前『今日の昼は俺が作るな』と言うからお願いしてみれば、皮のついたままのさつまいもや、切ってすらいない鳥胸肉を牛乳で煮込んだ……なんだかよくわからないものが出てきた。
具材がなにひとつスプーンに乗るサイズじゃないし、味もついていないしで、口にした途端、ふたりで無言になったのは記憶に新しい。
どうやらホワイトシチューに挑戦したみたいだったけれど……初めて作るっていうのにレシピすら見ない大ざっぱさは、男の料理って感じだった。
食べられないことはないにしても、粗削りすぎるし、今度作りたいって言いだしたら調理中、終始隣に立っていようと心に決めた。
そう考えると、洗濯は他のふたつと比べればだいぶマシかもしれない。
Yシャツとかでも、ネットに入れるわけでもなく気にせず普通に洗ってしまうとか、乾燥機にかけちゃダメなタイプの服を乾燥させて縮ませるとかいう事件はあっても、基本的にはできている。
でも……それにしたって、ひとりで暮らせるレベルではない。
だから苦笑いで言うと、成宮さんも同じような表情を浮かべた。
「まぁ……俺も、想像していた以上になにもできなくてびっくりはした。でも、考えてみれば実家にいた頃は、家事なんかなにひとつしてなかったんだから、できなくて当たり前だよなぁ。なんとなく、ひとり暮らしすればできる気がしたんだけど」
「……実家で、なにか不自由なことでもあったんですか?」
そんな家事もなにもできない状態で飛び出さなければならないような何かがあったんだろうか。
心配になって聞くと、成宮さんは「なにも」と笑顔で首を振る。