過保護な御曹司とスイートライフ


まとめて洗ったからカゴいっぱいになってしまったバスタオルや衣服を畳み積み上げていく。
正直、慶介さんの家事スキルは、成宮さんよりも高いと思う。結構器用だ。

「初めて鈴村さんに会った日さ、俺、合コンのゲーム教えようとしたでしょ。あれ、あとからアッキーにすげー怒られちゃったよ。〝おまえと遊んでるようなタイプの女じゃないからやめろ〟って」

ははーっと力ない笑みで言う慶介さんに、「成宮さん、怒るんですね……」と驚いて聞く。

あまり、怒りとかそういう感情を表に出さなそうなのに……と考え、今日の会社でのことを思い出す。

『おまえ、そんなこと言われて黙ってたのか?』
『だからって、華がないだの平凡だのって……面と向かって言われたらさすがに傷ついたりもするだろ』

そういえば、あの時も少し怒っているように見えて不思議に思ったっけ……と考えていると、慶介さんが「そりゃ、アッキーだって怒るよ」と呆れたみたいに笑う。

「まぁ、たしかにアッキーは自分がされたこととかには怒らないかもね。アッキーって度量が大きいからたいがいのことは許せちゃうんだよ。でも、自分にとって大事な人間がなにかされたりとかすると怒るかな」

大判のバスタオルをキレイに畳みながら、慶介さんが聞く。

「鈴村さんはさ、下心とかなくアッキーと一緒にいるんだよね?」

突然の問いに、一拍遅れてから答える。

「ただお世話になってるだけですが……下心はありません」

〝一緒にいる〟なんて言い方は、双方が望んで想い合ってそうしているようで語弊があるけれど、下心はない。
だからそう答えると、慶介さんはニカッと歯を見せる。

「ならよかった。アッキーはさ、あんな立場があるじゃん。だから下心持って近づいてくる女とかも結構いるんだよ。でもアッキーは真面目だからさ、そういうの適当にあしらえないっていうか」



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