過保護な御曹司とスイートライフ
「アッキーは別にいいって言ってたけど、俺としてはそのまま御咎めなしなんて許せなくてさ。だから、この間のことならアッキーも聞いてたよーすげー怒ってたしアンタの親の会社つぶされちゃうかもねーって言っといた」
それはなかなか怖い脅し文句だな、と思い苦笑いを受かべていると「ま、アッキーはそんなことしないけどね」と慶介さんが最後の一枚となったタオルを畳む。
「アッキーの肩書きしか見てなかったその子は、アッキーが本当にそうするかもしれないってビクビクしながら過ごしてるんだろうね。ま、いい気味だけど」
タオルのタワーの上に、ポンと最後の一枚を乗せた慶介さんが、「これ、どこに置くの?」と聞くから、洗面所に運んでくれるようにお願いして、私もバスタオルを持ってその後ろを歩く。
ふたりで洗面所に行き、決まった位置にタオルを置き終わったところで、慶介さんが私をじっと見ていることに気付いた。
「……なんですか?」
首を傾げると、ふっと柔らかい表情で言われる。
「アッキーはさ、本当にいいヤツなんだよ。だから、大事にしてあげてね」
「……私は、ただお世話になっているだけですから」
目を伏せ告げると、慶介さんが洗面所から出て行きながら顔半分だけ振り向く。
「でも、世話してるだけとしか思ってなかったら、アッキーは鈴村さんのために怒ったりしないんじゃない? もう、アッキーのなかで鈴村さんは〝大事なヤツ〟っていうカテゴリーに入っちゃってると思うんだけどなー」
両手を頭のうしろで組んだ慶介さんは、そのままリビングに戻っていく。
その後ろ姿を眺めてから……キュッと唇を引き結んだ。