Darkest White


気づけば、わたしは大きな温もりに包まれていた。


シャンプーの匂いが鼻をかすめる。



「俺がいる。」

「…っ、助けて…」

「俺がそばにいるだろ。怖えーもんなんてねえんだよ。」



光っ…っ

強く背中に回った腕は、とても力強くて、わたしの全てを包み込んでくれている。


怖いはずなのに…どうして、男の人とこんなに密着して、発作が起きないの…?



「俺がお前に見せてやるよ。」

「っ…光っ…。」

「サイコーな世界、見せてやる。」

「っ…。」

「だから、俺についてこい。」


泣けない。

泣けない。


でも、少しだけ胸の奥の痛みが引いたような気がした。


光の温もりが心地よい。

全体重を全て光に持たせかければ、光が強く受け止めてくれる。


わたしの体なんてすっぽり覆ってしまうかのように大きな光に、胸が高鳴る。


骨ばった手が、なんどもわたしの背中をさする。


どうしてこんなことをしているの?


でも、今はそんなことはどうでもい。

光がこうやってここにいることは、事実だから。


< 118 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop