Darkest White

なんでこんなに自分が冷静なのかがわからなかった。


ぐるぐると脳内を駆け巡るのは、今まで自分が生きてきた、面白みのない人生のスローモーション動画。


さして興味深いものではない、誕生日のケーキのこととか、どうでも良いけどわたしが幼稚園で初めて好きになった人のこととか。


まるで死の境目にいるかのように今までの記憶がまばらに蘇っては消えた。


…他人事のように。


そう、それはまるで映画みたいに、目の前で流れているような気がした。


バカみたいに突っ立って人生について考えている自分を想像して、思わず自虐的な笑みを浮かべたその瞬間ー






「動くな」






低くかすれた声が耳元で囁かれた。


ゾワッと背筋が凍った。


まるで心臓を鷲掴みにされたみたいに、震えながら息をヒューっと吸い込んだ。


身体中すべての穴という穴の毛が逆立ったような気がした。


寒気がしてぶるっと身震いをする。



だ、誰……


い、いつの間に…?!



まるで壊れた人形みたいに、ギク、ギク、とゆっくりと首を横に向ければ、どこの誰だかわからない、それでも威圧的なオーラを放つ人が隣に立っていた。


ふわっと香るのは、甘い、男性の匂い。


「動くんじゃねえぞ」


そう言って、ガッと肩を骨ばった手で掴まれ、わたしが茂みに多少強引に誘導された時、

月光で驚くほど美しい彼の顔が青白く浮かび上がった。




-ーー………え




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