Darkest White

「朝だってしてるし…って、あ。」


うっかりと滑り出てしまった言葉に絶句する。


すぐさま色を変えた光の目つきに後ずさりする。


やばい…学校行ってないこと…ばれ、た?


永遠のように思えた。前のわたしだったら起こりえない、『無』の空間。会話をすることで気を紛らわして、笑い続けることで虚しさを押し殺していた。


光に出会ってからだ。沈黙なんてもの、続いたの。


きっと数秒だったに違いないのに、身体中が震えているような気がする。こんなにも静けさに弱い人だなんて知らなかった。


光は静かに目線をわたしに向ける。スッと流されるその瞳が、その全てが、どうしてか威圧的で、びくりとする。


怒っているの…?


光の湖面のように静かな瞳はなにも物語らない。光が見ている世界を、一度でもいいから覗いてみたい。


その曇りのない瞳から見える世界は、きっと綺麗なんだろうな。


「お前は……、」


光の低音の声が地を這う。


「一度でも甘えたことがあるか。」


わたしを見据える光は、いつまでも無表情だ。


「お前は、自分の生きたい自分を生きたことが、一度でもあるか。」

< 130 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop