Darkest White
Night 4
If I could catch my dream
電話がかかってきたのは、光を一方的に避け始めてから二日後の真夜中のことだった。
『…凛ちゃん?』
スマホから届くその声を聞いた時、わたしは部屋の床に座り込んでしまった。胸の奥がチクチクして、怖くて、それでいてもっと聞いていたかった。
涙が流れない人間がここにいる。
涙をぬぐう動作さえできないこのもどかしさ。
いっそ泣ければ全て泡になるかもしれないのに。
「……っ、」
『久しぶりだな。』
優しいその声は、わたし心をどんどんと暖かく包み込んでくれる。
「…笹原、さん…。」
『オランダにホームステイするなんて聞いてなかったよ。』
小さく笑う音が、携帯越しでも聞こえる。
『凛ちゃんは昔から自由人だったからね。僕はさみしいなあ、凛ちゃんに会えなくて。』
ごめんなさい…ごめんなさい…
謝罪したってわたしたちの罪は償われない。それでも心の中で謝っておけば、神様がどこかで見ていてくれて、この罪を軽くしてくれるような、そんな気がしていた。
『でも、凛ちゃんの夢は全力で応援するって決めてるから。ははっ、参っちゃうなあ。』
「…っ、へへっ。」
乾いた笑い声を出してみる。
『大変じゃないか?オランダなんて、初の外国だろう。』
「ううん…全然、大丈夫だよ。」
『そっか…でも最後に会えなかったのがやっぱり寂しい。』