Darkest White
異様に喉が乾いて、わたしはフラッとした足取りで部屋を出る。真っ暗な廊下はどこか不気味で、だけどわたしの家よりはずっと…ずっと、安心するんだ。
視界がグラグラしてる。
あれ…青りんごの香りがする……。
あ………奥の寝室…………。
「お母さん………、ごめんねって言って………。」
これは夢なの?
白い影が見えるよ…
「お母さん、謝って………」
ーガシャン!
花瓶にぶつかってそのまま倒れこむ。
痛い…だけどその鈍い痛みがちょうどいい…久しぶりの痛み…わたしには、やっぱりこれが必要なんだ…
最低な人間だから、お仕置きが必要なんだ…
ねえ……。
どうして今浮かぶのが、あの、静かな黒い瞳なの…?
光…
どうして今、あなたが心に浮かぶんですか…?
ーガチャ
扉が開く音がしたいなや、バタバタと足音が聞こえてくる。
「おいっ!」
誰かがしゃがみこんだかと思ったら、強く揺さぶられる。
「っにしてんだよバカが。」
悪態を付いている彼はきっと呆れているだろう。
「風邪ひいてんなら言え。黙るな。」
「…っ、風邪、じゃな…い。」