Darkest White
だけど何故だか、ぞくぞくと背中を這い上がってくる恐怖はなかった。
ただ、まっすぐな彼の瞳が少し羨ましかった。
「助けてくれて、」
「うるせえ。」
…っ…はい?
「こんな夜遅く公園にいるお前バカだな。」
「何を、」
「帰れよ。家の人心配してんだろ。」
表情一つ変えずに、冷徹な眼差しでわたしを見据えるその男をじいっと見つめ返す。
わたしは浅く息を吸ってこみ上げてきた怒りを静めた。
1、2、3…
もう大丈夫。
「助けてくれてありがとう。」
他人の声みたいに聞こえる、優しい自分の声が宙に浮かぶ。
だって…こんな性格だとは知らなかったけど、
毎朝優しく声をかけてくれる君だって知ってるから、怒らない。
それに、怒ったって何も始まらない。