Darkest White
どこまでわたしは嘘が下手なのだろうか。
光はそんなわたしを静かに見つめている。
岬は天然なのかなんなのか、この変な空気を全く感じていないようで、『オレンジジュースほしい!』なんてのんきに言っている。
「飯食ったら、車庫へ来い。」
「え?」
「来い。」
光の圧力に負けてわたしはうなずくものの、内心はあまり乗り気ではない。今日もまた頭痛がひどくて、動きたくない。
食事が終わると、光はいそいそとお皿を洗う。その後ろ姿が、どうしてか嬉しいんだ。少しだけ飛び跳ねた水とか、料理の残った具材の生臭い臭いとか、そんなことすべてが、嬉しいんだ。
ピッカピカの台所見ても感じなかったこの満足感は、どこからきているのだろうか。
「わたしお皿拭くね。」
そう言って小さなコップを手に取る。その時、そのコップのりんごのロゴがちらっと見えた。
ーパリン!!
「っ…。」
指先が切れて赤いものがにじむ。
「っ、ごめん!片付けるね。」
慌ててタオルを探すものの、同じ店のもので、またりんごが視界に入る。岬が旅行帰りだったらしいから、きっと青森のおみあげだろう。初めて見たものだ。
落ち着け。落ち着け。
そうなんども言い聞かせるものの、ガラスの破片を拾おうと思っても、滑ってまた割れる。
「ごめ、」
ーパシッ。
急に腕を掴まれて、わたしはうつむかせていた顔を上げた。
至近距離に、膝をついてかがんだ光の顔が見える。
「いいから、俺がする。」