Darkest White

「っ、ごめ、」


「指先。」


赤い血を見て、どうしてか平常心を取り戻す。


光はぐっと距離を縮めると、わたしの手を取って、そっと舌で指先をなめた。一瞬ざらっとして、ぶるっと震える。


どくどくどく。


痛いからこんなに心臓が高鳴るの…?


それとも…


「消毒して、部屋戻ってろ。」


びっくりして痛みがあっという間に引いたわたしをよそに、光は手際よく破片を集め捨てている。


「俺の部屋に置いてある車庫の鍵も、ついでに取ってきてくれねえか?」


「う、ん。」


思考停止のわたしはよろよろと立ち上がり、消毒するのも忘れてそのままで光の部屋へ向かう。


黒で統一された殺風景な部屋。


わたしの部屋の三倍はある大きなタイル張りのこの空間は、わたしはあまり好きではない。


その部屋の棚の右端。そこに光の車の鍵がある。


鍵に手を伸ばしたその時、


パラパラ。


数枚の紙が床に舞い降りる。



「あ、」



そう思って紙を拾い集めたその時…



「え?」


思考が停止した。


「光…?」


そこには、眩しいほどの笑顔で笑う光と、子供達の姿が写っている写真が混じっていた。



「これ…本当に、光?」


くしゃっとした柔らかい表情。いつもは凍てついて冷たい瞳が、細くなり、大きく開けられた口からは白い歯が覗いている。それに、今よりもずいぶん色が焼けている。

< 154 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop