Darkest White
「っ、ごめ、」
「指先。」
赤い血を見て、どうしてか平常心を取り戻す。
光はぐっと距離を縮めると、わたしの手を取って、そっと舌で指先をなめた。一瞬ざらっとして、ぶるっと震える。
どくどくどく。
痛いからこんなに心臓が高鳴るの…?
それとも…
「消毒して、部屋戻ってろ。」
びっくりして痛みがあっという間に引いたわたしをよそに、光は手際よく破片を集め捨てている。
「俺の部屋に置いてある車庫の鍵も、ついでに取ってきてくれねえか?」
「う、ん。」
思考停止のわたしはよろよろと立ち上がり、消毒するのも忘れてそのままで光の部屋へ向かう。
黒で統一された殺風景な部屋。
わたしの部屋の三倍はある大きなタイル張りのこの空間は、わたしはあまり好きではない。
その部屋の棚の右端。そこに光の車の鍵がある。
鍵に手を伸ばしたその時、
パラパラ。
数枚の紙が床に舞い降りる。
「あ、」
そう思って紙を拾い集めたその時…
「え?」
思考が停止した。
「光…?」
そこには、眩しいほどの笑顔で笑う光と、子供達の姿が写っている写真が混じっていた。
「これ…本当に、光?」
くしゃっとした柔らかい表情。いつもは凍てついて冷たい瞳が、細くなり、大きく開けられた口からは白い歯が覗いている。それに、今よりもずいぶん色が焼けている。