Darkest White
乾き始めた指先を、ぼんやりと見つめる。
赤黒くなったそこは、今のわたしを映しているようだった。
「光…どうして、何も教えてくれないの…?」
震える手で光が持ち歩いている赤い車のキーを握りしめる。
光の事を、わたしは何も知らない。どうしてこんなに歯がゆいの?知りたい、わたしが一番に知りたい。こんな気持ち…初めてだよ。
凍てついた瞳を見るたびに、そこに自分を映して欲しいって思ってしまう。
たまに見せる笑顔に、心の奥から温かい何かが流れ出してくる。
光を遠巻きに見る女子高生にも、たまに光が繕ってくる嗅ぎ慣れない香水の匂いにも、胸の底がズキズキする。
わたしをこんなにした責任とってよ。
わたし以外の前であんなにも嬉しそうに笑ったことがあるなんて。
わたしの知らないところで優しい瞳をしていたなんて。
そんなの、いやだよ。
…っ、ねえ、光!
光のすべてを知りたいよ…
ああ、だめだ…
この気持ち、わたしはもう何なのか、薄々感ずきはじめていたよ…でも、まだ、認めない。光が自分を教えてくれるまで、封印しておきたい。