Darkest White
「…おい。」
振り返らなくても、体に染み込んでしまったその低音の声。
「んにしてんだ。行くぞ。」
顔を向ければ、吸い込まれそうなほど威圧的で神々しい顔が私を見下ろしている。
この家にわたしをいさせてくれる理由、光がこんなわたしに構ってくれる理由、教えてよ。
「…うん。」
おせえぞ、なんて言いながらわたしの前を歩く彼の後姿が、どうしようもなく…
愛おしかった。
こんなわたしにも、まだ残っていた。
くすぐたっくて甘い、わたしとは無縁だと思っていた儚い気持ち。
「…どこ行くの、光?」
そう聞けば、
「お前の知らねえところ。」
と返された。
光になら何処へまでもついていきたい。光が知ってるわたしの知らない世界は、すごくまばゆいのだろうなと思った。
「…連れてって。」
「あ?」
光が行く場所へ、いつまでもわたしを連れて行ってよ。
倉庫でふと光は足を止めた。
赤い車のキーを受け取りながら、光は小さく笑った。
「俺、なにしてんだろうな。」
え?
「…んでもねえ。」