Darkest White
小さく身震いをして、歩み出す光の服の裾を、駆け寄ってつかんだ。
自分の指先が震えている。赤黒くはれた指先が、いたいよっていっている。
影でよく見えないけれど、多分光は少し驚いたような表情をして私を振り返ったような気がした。
「…どうした?」
低く掠れたその声を聞いて、
無性に切なくなった。
光に抱きつきたい。わたしは悪くないって、罪なんかじゃないって、信じてもらいたい。
光と離れたくない。
どうして今こんなに動揺しているのかわからない。
近くにいて、それでいて心は遠い。
こんな風にわたしに接してくれるひとに出会ってしまったのは、きっと最低な風回しだ。
きっとのちにバチが当たる。どうしてわたしが幸せになれて、あの人がなれないの?
でも、もう、離れたくないよ…離れないでよ。光まで、離れていかないで…っ
ぎゅっと握りしめる服にぬくもりはなくて、わたしは思わず光の骨張った手を強く握りしめた。
ー初めてだった。
自分から男の人に触れたのは。
あったかい…
「光…ごめんね。」
偽りのわたしなのに…ごめんね。
かすかに笑って、そっと手を離す。
ー捨てられる前に捨ててしまいたい。
「おい、」
光が微かに眉をひそめて、身を屈めた。
わたしの目線に合わせるように顔を傾ける光を前に、わたしは慌てて背を向けた。