Darkest White
「あっれえ、かわいいお姉ちゃんだー。」
周りから冷やかしの声が聞こえて顔を上げれば、不良の集団が近づいてきていた。
金髪やら赤やらに染めた人たちが、傘の下からまるで動物園の生き物を見るように、少しだけワクワクした雰囲気を出しながらわたしを面白そうに見ている。
一人が傘をさしながら近づいてくる。
「ちょーっと遊んじゃおっかあ。」
周りの数人も近づいてきて、誰かが私に触れた。金縛りにあったみたいに動けなくなる。こぼれ落ちる涙までもが止まる。
「やっべ。もっと泣けよ。超タイプだわ。」
男の人が嫌い。
女の人を弄ぶから。
「大事なビデオ撮るから、かわいい顔してねー。」
男の人が嫌い。
殴るから。
「そのうち気持ちよくなるからねえ。」
男の人が嫌い。
裏切るから。
「おーいいねいいね。下着も好みだよー。」
男の人が嫌い。
裏切られた男の人を知っているから。
「顔上げて!キスしまーす。」
男の人が嫌い。
嫌いだったはずなのに…
『…誕生日、おめでとう。』
『…俺で悪かったな。』
『俺がそばにいるだろ。怖えーもんなんてねえんだよ。』
『…バーカ。』
どうしてかな……っ、どうしてかな…っ
どうして今、唇に感じる温もりがあなたじゃないの。
どうしてわたしのファーストキスがあなたじゃないの。
どうして、光を傷つけちゃったのかな…
『あいつには、名前の事、聞かないほうがいいよ。』
『あいつさ…名前ないから。』