Darkest White

雨に濡れた髪をかきあげて振り返る光はどこか色っぽかった。



胸の奥が切なく音を立てる。



光を見て、涙がほろり、また頰を伝った。



光の瞳が大きく見開かれ、息を呑んだのがわかった。





次の瞬間。





ギュッ





わたしは光に強く抱きしめられていた。




「ごめんっ…俺、ごめん…。」



まるでわたしが壊れてしまうかのように、優しく、震える体で光はわたしを包み込んだ。




「凛っ…いくな、俺が悪かった…ごめんな。」




肩で息をする光からは、湿った汗の匂いがした。雨でもみ消された香水の香りよりも、この匂いの方がずっと落ち着いた。




光はわたしを少しだけ離すと、頰を伝う雫を親指でそっと拭った。溢れ出すたびに、光は悲しそうに眉を寄せた。わたしの感情にこんなにも揺さぶられる光を見るのは、これが初めてだった。




「なにもされてねえか…?」




両手で肩を掴んで、わたしを下から上まで確認する、




そんな光の瞳はいつになく不安げに揺れていた。心配されることがないわたしの瞳に、また涙が盛り上がる。



「っ…。」



光はそのたびに、わたしの頰を震える指先で拭ってくれた。

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