Darkest White
わざと、ちぇー、なんて言いながらソファから立ち上がる。
渋々階段を上がって光の部屋に足を踏み入れる。
相変わらず殺風景で、少しだけ薄暗い部屋。
棚に近づいて、足を止める。
あの時の写真がずっと脳裏から離れずにいた。
今の彼とはかけ離れた眩しい笑顔、そしてたくさんの人に囲まれた彼。
それに…岬の深刻な表情。
初めて怒鳴られた瞬間。
そういえば、あれからあまり岬を見かけないな…
「って、だめだめ。2番目の引き出しっと…。」
わたしはぐいっと引き出しを引いて思わず目を見開く。
「っ、光…。」
やっぱり好きだ。光が大好きだ。
-ーー--
「こーおっ!」
わたしが階段からかけ降りれば、ふわっと良い匂いが漂ってきた。
「んんー!いい匂い!」
「着れたか。」
光は顔も上げずに聞いてきた。
「うん!…あの、本当に…あの、すごい…、っ、あの!」
「似合ってる。」
ぼやけた視界に、光の優しい表情が見えた。
「お前らしい。」
「っ、…ありが、」
「礼なんていらねえ。学校行くのに礼もくそもないだろ。」
「ふふっ…。」
「んに笑ってんだ。食べるぞ。」
わたしはふわふわとした足取りで台所へ向かう。
初めて袖を通した制服。
わたしの中の夢が、一つ、光によって叶えられたんだ。
ありがとうじゃきっと足りない。
いつか、恩返しをさせてね。