Darkest White
「っ、何、急に。」
心臓がうるさいくらいにバクバクいっていて、光のゆるく口角をあげた顔を直視できない。
好き、って言葉。それだけで、こんなにもわたしは敏感になっている。
今日の光はすごく変だ。そして今日のわたしはもっとおかしい。
好きって意識しただけで、こんなにも違うものなのだろうか。恋をしたことのないわたしからしてみれば、『好き』って気持ちは、もっと甘くてとろけるようなものかと思っていた。
だけど実際は全然違って。
余裕がなくて焦ってばかりで、光の言動一つ一つに心が反応して、おかしいよ。
「いや、気になっただけ。」
「意味わかんない。」
「んーだな。」
だなって何よ、だなって。光が気になったり好奇心を持つってところも驚きだけど、それ以上にこんなに素直な光も初めてで、どうしたらいいのかわからない。
「光はどっちの自分が好きなの?」
今日くらい、少し攻めたっていいよね。
「知らねえ。」
あーまただ。光おきまりの、一言で話題を終わらせるスタイル。
でもね、今日のわたしはめげないよ。光のこと知りたいから。
「光はさ、好きな人とかいるの?」
傷つくのをわかっていてこんなことを聞くのは、わたしがあんたのこと好きだからなんだよ?
ねえ、気づいてよ。
「いたらどうするんだよ?」
「……どうもしない。」
「へえ。」
心底興味なさそうにパスタを口に運ぶ光。
バカバカバカ。自分が虚しくなるだけじゃんか。光はこんなにもカッコイイんだ。彼女なんてきっと選び放題。もしかしたら、わたしが知らないだけで、ずっとお付き合いしていた彼女がいるのかもしれない。だから、夜中抜け出してるのかもしれない…
思考はどんどんと悪い方向へ向かうばかり。聞くんじゃなかった。踏み込んでもいいことない。光とは、一定の距離を保つのが一番なんだ。