Darkest White
Night 5
JOY
顔を上げれば広がる真っ青な快晴。
冷たい空気をグッと吸い込めば、鼻の奥がツーンとする。
首元に巻いたふわふわのマフラーを少しだけ緩めて、隣に並ぶ彼を見上げる。
憎いほどキマっている彼は、名無しの片想いの相手。
「行けるか?」
こくんと頷けば、ゆるく口角をあげるあいつ。
たまに見せるこの笑みに、わたしの心臓は高鳴るばかり。
「ん。」
片手をあげる彼に首をかしげれば、ぐいっと手首を掴まれて、彼の手とわたしの手が一瞬だけ重なり、パンと乾いた音が冷たい冬の校庭に響いた。
そして、ニッと笑ってあいつは歩き出した。
触れ合った手の部分だけ、ジンジンと熱い。
その背中は、まるでわたしにエールを送ってくれているようだった。
「…よし!」
ギュッとカバンを握り、風でひらひらと舞うネクタイを押さえ、人生の第一歩を踏み出した。
12月2日。
18歳。
わたしは晴れて、女子高校生になった。