Darkest White
校庭に出れば、改めて一人の高校生として歩いているわたしがいることを感じて、胸がいっぱいになった。
制服。
砂埃。
部活に励む生徒の掛け声。
秋風に踊る木の葉たち。
「光。」
「ん。」
「………本当に…楽しかった。」
「フッ、バーカ。」
そういってくしゃっと頭を撫でられた。
光だから怖くない。
いつの間にか、わたしと光を囲むように、野次馬の群れができているみたいだった。遠目にわたしたちが監視されているみたい。
「光はさ、嫌じゃないの?」
「あ?」
「人目に晒されて…歩くの。嫌じゃないの?」
殴られたっていい。聞きたかった。光の気持ちを。光の口から、聞きたかった。
「俺、人目を集めているように見えるか?」
だけど返ってきたのは予想もしなかった言葉。
「え、そりゃあ…。」
ちらっと横を見れば、もっと数を増した群衆。わたしがいるから?それとも…普段からずっとこうなのかな、光は。
学校でさえ、落ち着けないのかな。
「なんでだろうな。」
光はどこか遠くを見るような目をした。まるで何か遠い記憶を呼び起こしているかのように。
「今の俺じゃ、意味ねえなのにな。」
「え…?」
「…お前は、いいやつだな。」
初めての…ちゃんとした、誉め言葉だったのかもしれない。
思わず頰が紅潮してしまって、わたしはそれ以上何も聞けなかった。
この時、もっと聞けばよかったのかな。
そしたら、歯車が狂うことも、なかったのかな…。